
富久千代酒造と三つ星シェフが共創する鍋島の新たな一本
最高権威と評価されるインターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)で日本酒部門の最優秀賞に選ばれるなど数々の栄誉に輝く鍋島と、ミシュラン三つ星を7年連続で獲得しているL’Osier(ロオジエ)のエグゼクティブシェフ、オリヴィエ・シェニョンが共同開発した「鍋島 Microbiome 吟風」。
酒米には、オリヴィエ・シェニョンが推進するマイクロバイオーム農法で特別につくられた北海道旭川の吟風を使用。
フランス料理にも合わせやすい日本酒をめざし、唯一無比の鍋島に新たな一本が完成しました。
オリヴィエ・シェニョンより
このたびは飯盛さんと一緒にお酒をつくれたことを大変光栄に思っています。
この「鍋島 Microbiome 吟風」は、多良岳山系から豊かに流れ込む良質な水と、私が推進するマイクロバイオーム農法によってつくられた酒米、そして飯盛さん率いる富久千代酒造の哲学と技術によって生まれました。
飯盛さんは、味を規格に合わせることなく、お米が本来の美味しさを最大限発揮できるようにお酒をつくります。数々の世界的な評価を得てもなお、規模の拡大を追わず、自然体のお酒を造る飯盛さんの信念と、マイクロバイオーム農法を推進する私の想いが出会えたことは幸運でしかありません。
この、やさしく五感を刺激する「鍋島ブランド」の新たな一本を、多くの皆さまに楽しんでもらいたいと思っています。
富久千代酒造・杜氏からのメッセージ
これまで私は、鍋島という酒の世界観を守るという強い思いから、他の商品とのコラボレーションには慎重に向き合ってまいりました。ブランドの芯がぶれるのではないか、本来の美意識に違和感が生まれるのではないかと考えていたからです。
そんな中で今回、ロオジエの皆様、そしてシェニョンシェフとの出会いがありました。フランス料理界の第一線で活躍されるシェニョンシェフは、技術やセンスはもちろんのこと、食材に対するリスペクトと、細部にまで妥協を許さない姿勢において、まさに真のプロフェッショナルでした。
私自身、酒造りという世界で長年研鑽を積んでまいりましたが、シェニョンシェフとの対話や試作を重ねる中で、互いに異なる分野でありながらも「本質を見極める力」や「理想を形にする情熱」に共鳴するものがありました。ジャンルは違えど、志の高さにおいて通じ合う瞬間が多々あり、職人として大いに刺激を受けました。
また、資生堂という日本を代表するプレミアムブランドのフラッグシップであるロオジエの皆様の矜持、そして料理・空間・サービスすべてに宿る気品にも深い感銘を受けました。
このプロジェクトは、鍋島にとって初めての試みであり、大きな挑戦でもありました。しかし、だからこそ得られた学びと喜びは計り知れず、私たちの酒造りに新たな風を吹き込んでくれたと確信しています。
このような機会をいただけたことに心より感謝申し上げます。そして、この挑戦を支えてくださった農家の皆様にも、あらためて御礼申し上げます。
鍋島はこれからも、自らの核を大切にしながら、真に価値ある出会いには心を開き、進化し続けてまいります。
お酒ができるまで
私たちのお酒は選び抜かれた酒米と良質な水を使い、丁寧な発酵を経て造られます。今回の酒づくりにおいて、オリヴィエ・シェニョン氏はお酒の味わいの検討に加わっただけでなく、酒米づくりや麹造り、麹菌の植えつけにも携わりました。
北海道・旭川で有機JAS認証期間中(R7年産以降有機JAS認証取得予定)の酒米を栽培している安友さんの協力を得て、安友農場の一区画の土壌にマイクロバイオーム農法を可能にする乳酸菌とその代謝物を2024年7月上旬から数回に分けて散布しました。無事に実りの秋を迎え、マイクロバイオーム農法による酒米「吟風」が収穫されました。
収穫された酒米「吟風」は精米され、洗米、浸漬、蒸米を経て、シェニョンシェフも参加した麹づくりの工程へ。
蒸した米を熱いうちに広げて冷ますため、シェニョンシェフも蒸した酒米を走って運びました。
平行して、酒母(しゅぼ)というお酒を発酵させるための優良な酵母を培養しますが、今回のプロジェクトでは、酒母に入れる乳酸菌も酒米をつくった土壌に撒いた乳酸菌と同種のものを使いました。その乳酸菌が味にどのように影響を及ぼすか、シェニョンシェフの期待も膨らみました。
麹と酒母ができると醪(もろみ)仕込みへ。
櫂(かい)を入れて醪を攪拌するにも体力が必要だとシェニョンシェフも実感しました。
その後、圧搾、滓引き、濾過、火入れを経て、ようやく貯蔵、瓶詰めして完成しました!
マイクロバイオーム農法とは
厳選された乳酸菌とその代謝物を使って行われる有機無農薬の農法が「マイクロバイオーム農法」。
本来、自然界に存在する微生物を使った環境再生型農業です。
日本では、現状99%が慣行農業といわれる化学肥料や農薬を使用する農業が行われており、農薬や除草剤、化学肥料を使用せず、土づくりに着目する有機農業は、国内ではわずか0.5%にとどまります(出所:農林水産省・生産局農業環境対策課資料)。
本来、土壌の中には何百万種類もの微生物や菌が生息しています。しかし、農薬や化学肥料が土の栄養にとって重要な微生物や菌も殺してしまい、土が痩せてしまいます。
一方、マイクロバイオーム農法は、土壌や植物など、自然界にいる微生物の力を最大限活かすことで土から育てるという、無農薬栽培手法の一種です。
野菜や果物の栽培のためには、特別な乳酸菌を土壌に撒くことで独自の微生物の生態系が生まれ、化学肥料や農薬を使わなくとも、害虫を寄せ付けない有機農業ができるという仕組みです。
また、鶏や鴨など家畜を育てる場合には、同様の乳酸菌を飼料に混ぜることにより、家畜の腸内環境を整えることを可能にし、常に健康な状況を保つことができるため、抗生物質等を使う必要がなくなります。